命苫 恵翔

名前:命苫 恵翔[めいとま けいと]
年齢:20
身長:176cm
性別:男
種族:人間
性格:やんちゃ
職業:大学二年生
出身:現代日本
好き:興味深いもの、シスターさん
出演作品:シマナガサレv2.5
まあまあな大学生。
勉強も遊びもバイトもまあまあ。

我ながらそこまでパッとしない人生だと思っているけれど、
思っているなりに今のうちに色々やろうという意識はある。
それに、少なくともいろいろしてる現状は悪くない。

……という思想から、プライベートな時間では
資格を取ったり講習受けたりをしまくっていたため、浅く広く多芸。

シマに漂流し、同学部のあゆみさん(よその子です)と一夏の思い出を作ったり、
ケイコちゃん(よその子です)にらんぼうした末に殺めたり、
シスターさん(よその子です)を助けたくても手が届かなかったりし、
結果的にそこそこのお宝を持って元の現代日本に帰ってきた。

シマで起きたことを、祝福と呪いとして、人生を歩んでいく。

イラストなど

日記(投稿順、一部装飾や画像位置が異なる場合があります 流血表現やショッキングな表現が含まれます)


春休み。
大学生にとっては長い期間だ。

『これをしろ!』というものはないが、
それだけに過ごし方が問われる。

サークル活動、勉学、バイト、
インターン、資格取得、はたまたシンプルに趣味。

というわけで、考えられるうちの一つ、
資格取得にいくらかの時間を使うことにした。

何を取りにいくかといえば、水上バイク免許である。

……さて、実際に乗る過程、つまり実技の段。

乗り回し始めたところ、異音がした。
そのあたりの記憶は曖昧だ。
何があったかは靄の中。

まあ、ともかく俺はいまここにいる。


退屈な日常に訪れた転機というやつか?
それにしては洒落が効きすぎている。


「とか言ってる場合じゃないんだよなあ~。観光とはワケが違うぞ……」

多種多様な人(?)種、
多種多様な境遇。

それでも俺が案外正気なのは、
まだ夢うつつなのか?

それとも、こんな島にいるってことが非常識的すぎて、
それらのことが些細なことになっているのか?

まあ、殆どのやつとは意思の疎通ができるのは何より。
明確に敵といえるやつがいないのも何より。

つまるところ、協力ができるってことだから。
十数人もいれば、生き抜くことはできるだろう。

そこから先は、今は考えないでおく。

人が集まれば問題が起こる。
知らぬ者との共同作業ともなれば、なおさらだ。

だとすれば現状はかなり肯定的に見ていいのではないだろうか?

問題がありそうな人はおれども、
少なくとも迷惑がかからない分には構わない、と思う。

それに、島の開拓が進むのはある種の楽しさもあるよな。
それ以上に問題や煩わしさもあるけれど、
転機として見りゃ悪くないだろう。

神、そらに知ろしめす。
すべて世は事も無し。

ま、俺は別にそういう決まった宗教を持ってるわけではないけど。


全く順調、変わった植生のおかげで、
氷室すらもある。
頑丈な拠点と、十二分に確保できる水。
寝て遊んでるだけで暮らせるわけではないが、

それも生きるってことだろう。
ボトルメールを信ずるならば、
この島は近いうちに沈む。
が、それと同時に定期的に船が来るともある。

不安よりは、この珍しい環境を楽しむという気持ちのほうが今は強い。



それに、こんな珍しい場所で果てるとしたら、
それも人生としては見どころかもしれないしな。

昔からそういうところがあった。

言うべきでないと理解したうえでそれを試し、
やるべきでないことと理解したうえでそれを試し、
世界の反応を見よう、みたいな考えをするときがたまにある。

その一方で、冷静に状況を判断するときもある。

それは天邪鬼だとか、気まぐれだとか、考えナシと評されるべきだろう。


少なくとも、この島ではそれがうまくいった。
その一方で、俺は嵐の中行方不明になった人を探しに行こうとしないし、
衝動として飛び出していく人も止められないでいる。
この差は俺にはわからない。

単に、自意識より、遥かに俺は小さい人間なんだろうとは思う。

死にたいわけではないらしい。
わかっちゃいた。
真にそう思っていたならとっくに実行に移している。

ことここに至り、
嵐をきっかけに島がおかしくなっていった。
あるいはそこに境目などなく、
グラデーションを描いているだけかもしれないが。


つまるところ、俺の知的好奇心は目に見える泥舟に乗ることを許さない程度で、
こうして船を作って準備だけをすることになっている。

その準備で得た役得もある。
そう思えば、ある種感謝するべきなのだろう。

ああ、でも俺は。
全員まともなままのほうが嬉しかったかもな。

けしてありのままの真実を紡がない、なんてのはよくあることだが。

生命の保証――俺が見捨てないだけで、外洋で生き延びる保証はない。

女の子に触れたことがほとんどない――この島で何度か経験が増えた。

好感――事実。ただ一筋ではないだけで。そう要求されなければ、問題はない、と思う。


どこまでいっても己の欲望のために、
都合のいいことを言い、
時には観るだけの人間なのだな。

それについて反省することも改める気もないのだが。
少なくとも、ことここにあってはこの形質のおかげで、
引き出せたもの、味わえたものが多いのだから。

『パッとしてきた』ってやつだな。

なんとやらという。

素敵な子としばしの逢瀬ができて、
船もやってきて。

じゃあ、これで万事解決、かというと、
そんなこともなかったわけだ。

俺の興味、立場、相手の弱み、
そんなところにつけ込んで満たした欲望やら、何やらは、
当然俺の足に絡みついてくる。


君が罪人というなら、俺もその手の人間だな……
それも、私欲と都合にまみれた最悪の。

一番手っ取り早くすべてが解決するうえに、
俺の興味も満たせる最高の手がある。
俺はずっとそのことについて考えている……

はじめに君に声をかけていたら、
もしかしたらこうはならなかったかもしれないな。


考える――
交渉を成功させ、『危険』な者と船を分ける。
彼女は『証拠』を残しているといった。
いくら治外法権、などと言っても、日本まで持ち帰られたら終わりだろう。
実際に残るかどうか、はわからないが。

考える――
己の好奇心を精算する方法を。

意識して避けていた選択に、何度も辿り着く。

それしかスマートな答えはないように思えた。
想像よりも遥かに彼女はしたたかだったからだ。

禁忌であり、最大の罪とも言える殺人。
これは大いに俺の知見や興味を満たしてくれるかと思ったが――

想像とは真逆で、気持ちは醒めて、
ただ淡々とした、作業だった。

面白くともなんともなかった。
どうしてかはわからない。

ただ自分の行く末を守るために振るったからか。
……穢したくない礼拝堂を汚してしまったからか。
…………あるいは、彼女に善人ヅラをしておきながら、
自分はこんな有り様だったからか。

そうまでしながら、自分で終わらせることを選べない、
小さく、我儘で、どうしようもない男なんだ。

ああ、シスター、願わくば。
礼拝堂の穢れを見ないでくれ。
最後の挨拶をひっくり返して、もう一度話させてくれ。
……今の俺も、肯定してくれるのだろうか?
あるいは、彼女の手によって罰を与えてもらえるとしたら、
俺はどんな反応をする?

わからない話だった。
その気もない。

どんな顔をして会えばいいのかわからないから、
そのまま船に乗り込むのだ。

彼女は拠点にはいなかった。
礼拝堂で入れ違いになったのだろうか?

だとしたら。血の香りに、痕跡に。
気づいていたら、悪いことをしたな。

島に残してきたもの、
残さざるをえなかったものを想う。

シスター服の素敵な君のことを想う。
もっといっぱい話したかった、
もっと早く話しかけていたら、
もしかしたら違う未来があったかもしれない。
少なくとも、俺の手が血に汚れることはなかっただろう。
――いや、自分で汚したのか。勝手に。

それでも、俺がどうにかしたいと。
一緒に歩みたいと。
欲求が満たせないとしても構わないと。
そう考えたのは今のところ君だけだ。

きっと、どうにもならない話なのだ。
この物語のはじめから、このお話の結末に、
二人が寄り添って、共に歩んでいくものは用意されていなかった。
そう考えると、あの二人のことは羨ましい限りだが。

「いいですか、ケイトさん。いつか……」

人差し指をピッと立てて、俺を見つめる君のことを思い出す。
その先の言葉は、紡いでくれなかった。
戒めか、あるいは未来の話か。
俺も言えなかったことがたくさんある。
もっと話したかったと思う。
後悔ばかりだ。
俺の手が汚れていることを懺悔したい。
あるいは、君は知っていたうえでなお、
俺のことを好いてくれていたか?

もしも。

もしも、……俺は神も信仰もないけれど、
輪廻転生ってのがあるなら。
屍人形ゾンビである君が、
朽ちて、海に沈んで……

そうしたら、俺と出会えればいい。
俺達が……俺が、それを信じていたら。
神ってものがいるんなら。
もしかしたら、もしかしたならば。

彼女は、報われるべきだと思うし、そうあってほしい。

あの時の君の姿は、ずっと俺の心に残っている。


……制服の君が頭から離れない。

はじめは君の弱みに、性質につけ込んで。
俺の興味を、欲望を満たすためだけに触れ合った。

対等の契約を、俺は果たすつもりだった。

帰ったあとのことなんて考えていなかったし、
君がそこまでの人間だとも思っていなかった。
一時耐えて、あとは黙る、弱い女だと。

そんなことはなかった。君は強かな女だったな。

俺は俺の人生が一番大事だ。
――シスターにも、笑顔で見送られた俺の人生なのだから。
台無しにするわけにはいかなかった。

だから、森で殺した。
水位が上がりかけているさなか、
各々自分たちの終わりを模索していた頃合いだ。
きっと、誰にも見られていないだろうな。

強かな女だったけれど、同時に俺を警戒していなかった。
もしかしたら、あれは脅迫じゃあなくて……
単に、裏切りを止めるための示唆、ぐらいでしかなかったのか?

……だとしても、俺と身体を重ねたことをいつか気まぐれに話されたら、
俺の先行きは限りなく暗い。

だから、俺が平穏に歩むために。
シスターの笑顔に見送られた人生のために。

結局のところ、やるしかなかったんだ。


……俺に追われ、礼拝堂に寄りかかり、
走れなくなってとうとう、神に、俺に祈りを捧げる、
女の姿が頭から離れない。
肉を突き刺す感覚も、そのたびに上がる悲鳴も。

血にまみれる君の姿が……俺の中には未だに残って、
ただ怯えた顔で俺を見上げるんだ。

……そうして、無事に日本に帰り着いて。


一週間ぐらいいなかった計算だ。
色々と……いや、案外だったか。
何しろこの性格だ。

思い立ったことをなんでもやる人間だから、
一週間連絡がつかない、大学にこないぐらいでは
俺と長く付き合っている奇特な連中もそう焦りはしない。

無人島に漂流しててよ~、なんて言ったら冗談抜かせみたいな顔されたけど。
マジなんだってば。

とりあえず持ち帰った金品はなかなかの金になった。
当分バイトはしなくていいか。
こっちの時代の流れとは違うようなものだから、
骨董品的価値は見出してもらえなかったけれど、
そもそもの質量と質が多かったから、
まあ、しがない大学生にとってはかなり嬉しい金額だった。

……俺に壮大なストーリーがあろうとなかろうと、日常は回る。
大学生活だってあるし、
俺は変わらずいろいろなことを試している。

ああでも、そうだな。
明確にルーチンに増えたものがある。
それは勉強。それも、宗教周りのことだ。
この勉強は広義の話で、日曜日には礼拝を覗きに行ったりしている。

坐禅会なんかにも出ちゃったりしてな。

学びがガチャガチャ?いいんだ。わかってやってるんだから。

「とうとうかぶれたか?」なんて友人に笑われたりしたけど、
まあ、かぶれたっちゃかぶれたといえるな。

何しろ、あるかどうかもわからない生まれ変わりのために、
実際の宗教が何だったのか
(彼女自身の信仰心は、ふんわりとしたものか、あるいはそもそも無かったのだけれど)
もわからないのに、
いろんな宗教やらをかじったり体験したり学んだり。


そうすれば、ちょっとは彼女に近づける気がしたんだ。


ああ、それともう一つ。
家にはシスターの女の子のぬいぐるみと、眼鏡の男のぬいぐるみ。
これもまた自作だ。
島で作って、置いてきたんだけれど、
家にも欲しくて作った。
女々しいもんだが、こういうのはそれこそ信仰だからな。
信じて、そこにあれと思えば、いつかはありえるかもしれない。
それに、これがここにあること自体が、俺が彼女との記憶を薄れさせないための大事な存在になるわけだ。
それに、彼女が最期の時が来るまでに、
ぬいぐるみを見つけられていたら……
なんだか、これで通じ合っている気分になるだろう?

……特に日曜礼拝なんかは、いろんな人がいる。
元気な女学生を見たり、おどおどしている子を見ると。

時々、彼女の姿が頭に張り付いて離れなくなる。
命乞いする姿、一挙手一投足に怯え、身体を硬直させ、
ただじっと耐える姿、噛み殺した声、道具としての身体、
純然たる恐怖の眼差し、神に俺に祈る姿、生暖かい血、
肉の感触、逃げ出す背中。

そういう時は、色々やる。
あゆみさんに連絡してデートの一つでもしてみたりだとか、
懺悔の真似事でもーー当然何をしたかは正確には言わないがーーしてみたりだとか、
はたまた運動にでも集中してみたりだとか。

そうして、気を紛らわせて、俺を紛らわせて。

でも結局。
俺がシスターのことをいくら求めて、求めて、変わろうとしても、
追いかけても、

俺は俺で、変わっちゃいなくて。

今でも赤く染まった彼女の姿だとか、
ただ欲望のままに組み敷いた時の姿だとか、
そういう姿ばかりが心に染み付いて、
そのたびに救いを求めて。

発作的な欲望も、興味を満たしたいという欲望も捨て去れなくて、
そのたびにシスターへ抱いた憧れとか憧憬で必死に追い払って。

そうやって、むかしに足を絡め取られながら、
何か奇跡があればいいと、
血と我欲で汚れた手足を引きずって、
今日も前に歩くのだ。

まさしく業だ。
日が立つごとに、俺の背中は重くなる気がする。
洗いざらい吐いたとても、そもそも誰も信じないだろう。
もしかしたら遠く離れた地域の、全く関係のない女学生を殺めたと自白しても、
亡骸も見つからない、関連性も見つからない。
証拠は全部海の向こう、世界の向こう。
一体どこの誰が裁けるのか。

俺を見ているとすれば、先に地獄に送った彼女だけだ。
死人に口なし、地獄の底からじゃ何もされるわけでもなし。

しかし、シスターのことを思って何かする時、
デートなんかをしている時、
はたまた、何かの種になればと見聞を広めている時。

事あるごとに、地獄の底から、ただ睨まれているのだった。